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そもそも、拓の言う『恋をしている』って何の基準があってそういうことになるんだろう。
少しでも顔が見たいとか、声が聞きたいとか。
ドキドキするとか?
拓に自覚しろと言われたものの、私にはそういうのがよく分からない。
「難しく考えすぎだ」
顔を上げた瞬間に、デコピンをくらった。
「どうせ、くだらねーこと考えてんだろ?」
「くだらないってなによ。拓のせいでこんなに」
悩まなくてもいいことを考えているというのに。
「ハイハイ。スズはただ『会いたい』って思ってりゃいいよ」
「……会いたいなんて」
「真面目なお前のことだから、酷いこと言ったことを謝りたいって思ってんだろ?」
それは、多少ある。
「謝りたいのに会いに行かないなら、ただ想ってればいい」
「……それでいい、の?」
本当に分からない。
都神さんの優しさに触れて今まで見てきた人たちとは違うと思う。
関わるなと、言ったことに後悔はないけど、心臓が痛くて。
その痛みのせいで、泣いてしまいそうだった。
「それが違うと思うなら、スズがしたいようにすればいいだけだ」
駅に着いて、違う路線だと分かり私のほうの改札まで送ってくれた。
「今日は色々ありがとう」
「どーいたしまして。賭けのこと忘れんなよ」
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