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「芯さんなら泣いて喜ぶと思うよ」
「気持ち悪いことこれ以上言わないで」
容易く想像できてしまうから、考えないようにした。
なのに。
「いーじゃん。一回ぐらい『お兄ちゃん』って呼んでやれよ。『お兄さん』でもいいよ」
「絶対イヤ」
芯さんにでも頼まれたみたいにしつこい。
「一応、芯さんに途中まで言ったじゃない」
「『おに……』って言っただけだろ」
そこまで言っただけでも、私にしては頑張った。
「少しでもいいから、ちゃんと話せよ?」
こういうときだけ、いつも大人びた表情をする。
バカなことをして騒いで、どうみてもガキにしか思えないのに。
「……気が向いたら」
芯さんと年を重ねるごとに話すようにはなった。
それでも、それはあくまで人として。
家族としては最初から、何もしていない。
「俺にできることがあれば協力するから」
他人から見たら簡単なことなんだろうなと、頭の隅で考える。
「……何、話せばいいの?」
都神さんのときと同じように拓に聞いた。
何気ないこと。
なんでもいいよなんて、そんなものは答えじゃない。
……拓の答えは?
「スズのこと」
「え?」
「スズの好きな歌とか本のこと。大学でやってる勉強、これからやりたいこと。バイト先の人たちのこと教えてやれば喜ぶよ」
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