~センプレ~

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芯さんからいつきてもいいとあったけど、なるべく長居は避けたかった。 だから、バイトのある日にしてもらった。 「鈴ちゃん」 補充をしている最中に、コミックの順番がバラバラになっているのがあった。 「鈴ちゃん」 肩を叩かれ、ようやく加納さんに呼ばれたことに気づいた。 「この本あるか検索してくれる?」 「分かりました」 気にしないようにしていても、どうしても気が重くて、この日はいつもつまらないミスをしてしまう。 今も仕事中なのに上の空になってる。 休憩中に川上さんと一緒になった。 川上さんともあれ以来、仕事のことしか話していない。 「お疲れさまです」 「お疲れ。今日体調でも悪いのか?」 「……大丈夫です。すみません」 「しんどかったらいつでも言えよ」 あんなことあったのに、川上さんは変わらぬ態度で接してくれた。 「はい。でも、本当に大丈夫です。ありがとうございます」 思い返すのも悪いかと思ったが、やっぱりせっかく誘ってくれたのに、途中で帰ってしまったのは申し訳ない。 「あの、この間はすみませんでした」 「俺も悪かった。ごめんな」 お互いに笑みを浮かべ、最近のギクシャクした空気がようやくなくなった。
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