158人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れでーす。あ、鈴ちゃん顔色良くなったね」
休憩に入った加納さんに言われ首を傾げた。
「そんなに悪かったですか?」
「うん。倒れるんじゃないかと思った」
心配かけたのを申し訳なく思いながら、時計を見て戻った。
「お疲れさまでした」
バイトも終わり、この後のことを考えて足が重くなる。
「鈴ちゃんお疲れ。良かったらご飯でも食べに行かない? 川上さんも一緒だけど」
「……おい、なんか遠回りに邪魔だって言われた気がするぞ」
「そんなこと言ってないでしょう。小さいこと気にしてたら出世できないですよ」
「お前にそんな心配されたくない」
ふたりのそんなやり取りに、思わず笑ってしまう。
「誘ってくれてありがとうございます。今日はちょっと行くところがあって行けないんです」
「そうなんだ。また誘うから都合良かったら行こうね」
「はい」
駅まで一緒に三人で歩く。
主に加納さんが喋って、川上さんが突っ込みを入れていた。
いつもとは違う路線。
ふたりと別れて余計に静かになった。
周りはアナウンスや車や電車の音。
人の声で溢れているのに、私の周りは静かだった。
歩く度に、家に近づいていく。
懐かしさよりも過去を思い出さずにはいられなくて、家の前で足を止めた。
最初のコメントを投稿しよう!