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「ほら、燦も鈴も座る!」
律子さんの声に思わず座ってしまった。
芯さんは私が帰らないと思ったようで、自分の部屋に向かった。
「……こんなことなら泊まれば良かった」
小声で呟いたんだろうけど、しっかり私の耳に届いていた。
「燦、この間の試験の成績上がってたな」
着替えた芯さんが燦の頭を撫でながら席についた。
「うん。芯兄が勉強みてくれたからね!」
「頑張ったな」
嬉しそうに笑う燦と慈しむような笑みを浮かべる芯さん。
孝文さんにお酌をする律子さん。
どこにでもいる家族の形。
そんな場所に私がいることが不思議というか違和感を感じて仕方ない。
私が帰る場所……
どこだろう……?
「そう言えば、鈴。四宮先生覚えてるか?」
唐突に、孝文さんが言った。
「覚えてますけど」
私の高校3年の時の担任だった先生だ。
「燦の今の担任も四宮先生なんだよ」
気のせいか、燦の空気が重くなった。
「この間、飲み屋でたまたま相席になってな。鈴のこと気にしてたぞ」
「そうですか」
中々ハッキリ言う先生だから好き嫌いが分かれていた。
私は嫌いじゃなかった。
回りくどい言い方されるより、ハッキリ言われて逆に良かった。
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