158人が本棚に入れています
本棚に追加
「鈴が希望するから背中は押したけど、本当はもっと上の大学狙えたんじゃないかって、少しだけ残念がってたぞ」
在学中にそれとなく言われたのは覚えている。
でも、一番近いところで希望する学部があればそれで良かったから、興味なかった。
そもそも、働くと言った私に律子さんと孝文さんは首を縦に振ってくれず、大学に行ってくれと頼まれたのだ。
「元気そうで良かったです」
「あたし、あの担任キライ」
だろうなと思った。
和やかな雰囲気に、燦の素っ気ない声で一瞬静寂に包まれた。
「なんでだ? いい先生だろ」
「だって色々ウザイし。それに」
燦の視線が私に向けられる。
こういう時は、決まっていいことは言わない。
「誰かさんと比べられてムカつく」
燦の成績は下の中。
陰ながら律子さんは気にしている。
「じゃあ、鈴に教えてもらう?」
芯さんがとんでもないことを言う。
「え゛ーあたし、芯兄がいい!」
「私も教えるのは苦手です」
私たちの反応に芯さんは苦笑い。
分かってて言わないでほしい。
「芯に教えてもらうんだから、ちゃんとしなさいよ。成績がこれ以上悪くなるなら塾か家庭教師考えてるんだからね」
律子さんからの言葉に燦が黙る。
「まあまあ。その時は鈴に頼もうよ」
「絶対イヤ!」
にこやかな芯さんとは逆に、燦は物凄く拒否反応。
最初のコメントを投稿しよう!