いまいち掴めない奴

3/14
前へ
/85ページ
次へ
来た道を辿って教室に戻った。 放課後。 ヒーターを消されて冷えた空気に、身を震わせて扉を開けば。 「…あ、江口くんだ」 「…おー」 窓際の、ちょっとした出っ張りに腰掛けていたクラスメイト──堺 実李(サカイ ミノリ)。 肩までの茶色いボブ頭を傾けて笑う姿は、とても綺麗だと思う。 綺麗だと思うし、たまに話したりするけど…… いまいち、掴めない奴。 「江口くん……、忘れ物?」 「そんなとこ」 「…そっか」 それに、綺麗と言っても、こいつの笑顔はどこか作り物めいている。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加