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「初雪だね、江口くん」
「…そうだな」
帰宅を促すのも馬鹿らしくなって、ため息をついた。
こいつは、何言っても帰る気はないんだろう。
誰もその理由は知らないけど、よろしくない事情があるのは確かだ。
「どおりで寒いと思った。ねぇ、江口くん」
「…そうだな」
いちいち語尾に“江口くん”なんてつけなくても、この教室には俺とお前しかいないだろ。
なんてツッコミは、言わないでおいた。
「…その、ワンダーフォーゲル部?って、終わり遅いの?」
「んー、もうすぐで終わると思うよ」
「…そう」
堺との会話は、ふわふわして現実味がない気がする。
はたと、友達が待っているのを思い出して、堺に背を向けた。
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