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「…程々にしなよ」
その言葉が何を指すのか理解したらしい堺は、あは、なんて笑って。
「ばいばい、江口くん」
少し高めの、柔らかい声には答えずに。
──面倒臭そうなことには、極力関わらない。
細く長く、最短ルートで生きていく。
だから、こいつにも深入りしないのが正解だ。
「拓也、遅かったじゃん。忘れ物あったのか?」
「あぁ、悪い。…行こう」
一歩外へ出れば、そこはもう冬の匂い。
冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んで、先程までの会話を忘れるように足を進めた。
堺 実李。
いまいち掴めない奴。
関わらないのが、一番だ。
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