エピソード3

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「わしが秘境への案内人を連れて来れるとしてその時間的猶予はあまりない。いつまでも生きられるとは限らぬからのぉ」。「ご老を失った私はまた独りぼっちか」。「元のいも虫に成れぬ訳でもあるまいに」。「孤独には慣れてはいますが本当にご老はその案内人とやらを連れて戻ってくれるのですか?」。「確約はできぬ。秘境への入り口は季節により開いたり閉じたりするようだからのぉ」。「今ここで羽をむしればよいのですか?」。「今すぐとは言わぬ。少なくともわしが案内人を連れて来れるまでの数週間後までにはむしり取っておけ」。沈黙の時が流れた。かくしてご老は身繕いを整え旅立って行った。「羽をむしってもまた生えてくるんだったな、この羽は。だったら案内人とやらがくる数日前ぐらいにでもむしっておくか」。
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