エピソード1

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花蜜には相変わらずさまざまな蝶、蜂達が立ち寄っては駆逐されと一人気取っていたが時は残酷にも過ぎてゆく。そう、老いという名の滅びへの序曲が…。ゆえにありとあらゆる手段を尽くし自身にあう蝶や蜂はないものかと探し始めるべく更なる芳香を漂わせるのだがせいぜい周囲数百m程の空間しか満たせないものであった。ゆえにピタリとあう花と蝶の出会いの芽は奪われてしまった。 蝶には飛翔力が、花には芳香力がそれぞれ弱まりしゆえ致し方なきことのようにも写った。毒には毒でとばかり花は最期の力をふりしぼり一匹の蜂を捕まえたかに見えたが、やはり受精には成功したものの蜂はすべからく命を絶たれてしまったのである。 花にしてみれば、受精しさえすれば問題ない。そう遠くできらびやかな羽で唄う蝶などどこふく風よとばかりに。そしてその季節も終わりを告げ花は見事種をつけ後世へと脈を継いだのである。蝶のその後はどうなったのか、誰も知る者などいなかった。
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