エピソード2

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実は蝶には思い人ならぬ思い蝶がいた。その蝶は毒花の番人たる役目を押し付けられていたもので勝手に毒花によその蝶や蜂が近づかぬよう四六時中見張り役をさせられていたため毒花の澱(おり)を受けてその蝶もまた飛べなくなっていたのである。しかし思いだけはかろうじて毒花を通じて交換し合えた二蝶だった。毒花はその二蝶のことを気づかいさまざまな手段を尽くして招き入れようと画策していたが、共に飛べなくなっていた二蝶にとっては無用なるものであった。 そして季節は過ぎ冬至を迎える頃に二蝶に離別の思いが募り出すのである。雄蝶は気分を変えたくて仕方なくなるのである。それに気づいた毒花は雌蝶に注進した。 「もうあの雄蝶に思いを寄せても無駄ではないかしら。心代わりをしたみたい」
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