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ここは地球から遠く離れた星
太陽の光もわずかにしか届かない
今日も天気が良い、この灰色の空の下
年に一度だけ太陽の光が遮られずに明るい日があるが赤い空と恐れられほとんどの人は外に出ない。
そう、俺以外の人間は。
五年前、俺が十三歳の時、その年も赤い空が見えた。その日俺は好奇心で外に出た
俺は驚いた
暖かい日差し、そして何より本で見た地球の『夕暮れ』という景色にとても似ていて目を奪われた。
家に帰ると勘当された、その時名前も奪われた
だから今の俺には名前が無い
ただ三日前、俺と同じ境遇の黒いローブに身を包んだ少女に出会った
彼女は親を幼い頃に亡くし、自分の名前を知らない。
俺は彼女の家に誘われた、二日考えた、俺は行くことにした
三日前に渡された地図を頼りに彼女の家に向かう
彼女の家に近づけば近づくほど人通りが減っている。
「ここか」そこにはとても立派な門が堂々と立っていた
俺はチャイムを押す
ガチャッ
「待ってたんだよ」
そういうと彼女は不機嫌そうな顔をしてみせる
「ごめん、俺も迷っていたんだ」
俺はそう言って彼女に笑いかける
「分かっているわ、私の方こそ自分の事を教えてなかったもの、私の方こそ悪いわ」そう言って彼女も俺に微笑みかける
「とりあえず中に入って」
顔ははっきりとは見えていなかったが俺にははっきりとわかった
中に入ると一人で暮らすにはとても大きな家だった
「あんたの両親金持ちだったんだな、こんな広い家見たことすらない」
「そうなの知らなかったわ、あっ、お茶出すね」
「助かる、俺も喉乾いてたんだ」
「紅茶で良い?、紅茶が嫌ならコーヒーもあるけど」
「嫌じゃないさ、俺も紅茶で良いよ」
ここは応接間のようだ、机、ソファー共に高級感に溢れていた
「ローズティーにしたわ、パックのだからあんまり香りはしないかもしれないけど」
「ハーブティーは初めてだったんだがなかなかいけるな」
「喜んでもらえて嬉しい、私もローズティーは初めて作ったの」
俺はふと上を見上げる、シャンデリアがとても眩しい、いろんな事を思い出し、悲しみが溢れ出す
一人で抱え込んでいるしかなかった、けれども今は一人じゃない
そう思うと涙が止まらなかった
「大丈夫?どうかしたの」
彼女はそう言うと、俺にそっとハンカチを手渡す。
「ありがとう、たいしたことじゃないさ、一人じゃないと思ったら嬉しくて涙がね」
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