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…………。
「聞いてるか、神界。代償は右眼だ」
どの部位にしようか逡巡した。
身体の一部とはいえ、髪が1本とか、別に2つ無くてもいい内臓とか、そういうのは代償にならない。
だが片眼位ならば、距離感や視界の範囲は狭まるが、気配に敏感になった今ではあまり被害は無いと考えた結果だ。
声を神界へ響かせた瞬間──右眼に激痛が走った。
「グッ!!……っあ……ッ!!」
思わず声が漏れる。焼かれているような、そんな感じたことの無い痛みに襲われた。
けど、負ける訳には……!!
*
──暫時が過ぎ。
右眼の痛みは、漸く収まった。
膝を着き、ゼェゼェと右眼を押さえて息を荒げる。
押さえている右手を1度離し、指で右眼をなぞる。
だが……指先には、火傷の痕を触ったような感触がした。
確かに、瞼が開かない。
チッ……、とりあえず傷口は隠したい。早速、邪神の能力を使ってみるか。
邪神の能力はただ1つ。″創造″。
俺が″想像″したものは、全て″創造″に変える能力。
俺は眼帯と、ついでに邪神らしく黒いロングコートを創造した。
息を整え立ち上がり、眼帯を装着し、カッターシャツの上からコートを羽織る。
似合ってる云々は別として、代償にも耐え抜き、これで用意は整った。
「……δηρ」
俺は腕を水平に前へ突きだし、掌を正面に向け、前邪神が唱えていた言葉──″神界古代語″を呟く。
すると掌の先に闇が渦巻く縦型楕円形の穴が出現した。
これが、次元を渡る道になる。
「さぁ、何をしてやろうか……」
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