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俺達はある一角を左へ曲がる。左に俺、右に昴という並び順だった。
だが、曲がった先に見えた光景に、俺達は一瞬呆然として立ち尽くす。
「「ッ!?」」
俺達が見たのは、中年男性が携帯を片耳に当てて、正面を見ずに運転しながら道一杯に走る引っ越しトラック。
距離としてはもう目と鼻の先だった。
それでも、決して逃げられないこともなかった。
一歩足を下げて元の角に戻れば、トラックは目の前を通り過ぎるだろう。
「あ、まず」
頭が異常に回転した俺は冷静に呟いて、大きく後ろに下がる″予定だった″。
──そう、″予定だった″んだ。
「ちょッ!?俺を置いてくなよッ!!」
あろうことか、焦った表情に満ちた馬鹿昴は俺の右腕を勢いよく掴み、急なことで反応出来ない俺を自分の近くへ無理矢理引っ張った。
「なッ!?ふざけんなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺の人生で多分1番だったであろう叫声を最期に、身体に走った激痛と共に意識が完全に吹き飛んだ。
……そこで、俺の記憶は終わる。
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