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「いい。我は好きでやったのだからな」
優しい声色で紡がれる言葉に、俺は頬を緩める。
──その時、彼の身体が下から徐々に透け始めた。……輪廻に乗る前兆だ。
「もう1度だけ。ありがとう」
今度は頭を深く下げた。本当に、それだけのことをしてもらった。
「……零真が行く異世界は、世界神が地球と同時に創った世界だ。その世界の人間を殺そうが何しようが困るのは世界神……」
思いもよらなかった言葉に、俺は顔を上げて彼を見つめる。
最後に、口だけを動かして一言告げると、淡い光を残して完全に姿を消した。
誰もいなくなったこの場所で、俺は1人、先程の言葉を反芻する。
「…………好きに生きろ、か……」
……なら、やるか。
俺が、俺の好きなように……。
*
覚悟は決めた。
人を捨て邪神として生きる決意を胸に秘めながら、俺はあることに苛立ちを隠せなかった。
俺が今いるのは″神界″と呼ばれ、世界神とその部下の特別空間だ。
……だから、普通は邪神も入ることは出来ない神聖な場所。
世界神はとりあえず俺をここに放置して処理をしようとしていたのを、前邪神は来てくれたようだ……。
「″部外者が神界から出る場合、身体の一部を犠牲に″しなければならない。ただし、世界神が許可した者は例外」
……最悪だな。昴は例外だろ?
ハァ、面倒だな。
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