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新聞屋さんが夕刊を配達してくれるのが、だいたい四時ちょうど。
その時間に新聞受けの前で、彼と遭遇したことが、何度かある。
通用口には各部署ごとの新聞受けが、マンションの集合ポストのように並んでいる。
新聞屋さんが全ての新聞を入れ終えるのを、五、六人の職員が待っているのは少し異様な光景だった。
その中に彼がいた。
少し迷ってから、声をかけた。
「…おつかれさま」
「おつかれさま」
通用口の磨りガラスがほのかにオレンジに染まっている。
声をかけたはいいけど、何を話そうかな、と考えていると、彼の方が口を開いた。
「新聞?」
「うん…、そう。」
今日は新聞屋さんがいつもより少し遅れているようだ。
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