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なんのことはないが、カレンダーで見たら、それからちょうど二ヶ月経っている。
四時五分前だ。
…そうそう、最近忙しいからって、夕刊取りに行くのよく忘れちゃうんだよね。
新聞を取りに行くのは、新人である私の役目なのだが、取りに行くのが遅くなると代わりに他の人が持ってきてくれてしまう。
私は少し早めだが、夕刊が来ていないか見に行くことにした。
四時ちょうどに行ったら、彼がいるかも知れないけど、この時間なら…。
ここ一ヶ月とちょっと、極力彼に関わらないように細心の注意を払ってきた。
しかし、避ければ避けるほど強く意識してしまっていることにも薄々気づき始めている。
そんなこんなで、「今日は彼に会わなくてすむ!」とか、結局彼のことを考えながら新聞受けに向かい階段を降りているわけだ。
二階と一階の間の踊り場からは、通用口に向かう廊下がもう見える。
そこから足を出したとき、思わず踏み外しそうになった。
心臓が止まるかと思った。
死ぬかと思った。
実際に止まっていたのは私の足だけだったのだが。
彼が前を横切った。
一瞬、体が引き返そうとしていたが、私はすぐに動作を再開して、静かに階段を駆け降り、彼の背中だけ目線で追いかけた。
彼は新聞受けには目もくれず、通用口から出ていった。
おつかいかな。
戻ってくるときに夕刊を取るつもりかも。
…そんなことどうでもいい。
新聞受けを覗いた。
夕刊はまだ入っていなかった。
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