HR0:旅立ちの章Ⅱ~失意~

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≪シノブ≫「さて、何があったのか聞かせてくれ」 エリンに代わって病室に入り、シノブはベッドの隣の椅子に腰を掛けながら、早速そう切り出した。幼馴染を気遣う言葉は無かった。 レンは一度深呼吸をし、報告を始めた。始めは調査隊としての淡々とした行動報告だった。しかし、客観的な状況・行動の情報は、次第にレンの主観的なものに変わってくる。恐怖と絶望に満ちた報告を進める毎に、レンの額には汗が滲み、呼吸は荒くなり、終わりの方では涙を流していた。 ≪レン≫「みんな、出来る限りの事をしたの…でも、私が…私だけが…何も…それなのに…」 自分だけが生き延びてしまった、という自責の念に、ただただ苛まれ続けていた。 レンの報告を聞いている間、シノブは作成中の報告書に眼を落したまま黙っていた。それは、レンの泣く所を見たくないからだった。途中レンの方に顔を向けたが、数秒も見ていられずに、また報告書に眼を向ける。 ≪レン≫「…ごめん…ごめんなさい……ルチルは、私のせ」 ≪シノブ≫「俺の方から聞きたい事はもうねぇ。…だが、そうだな、その続きを補足しておこうか」 黙って聞いていたシノブだったが、その続きを言わせない様に、レンの言葉を素早く遮った。レンは俯いたまま泣き続けているが、シノブは話を続けた。 ≪シノブ≫「さっきの話だと閃光玉って事になるが、塔で何か光ったって連絡があってな。エリン隊長は別の任務から帰って直ぐだったが、それを聞いて心配になったらしく、俺を連れて塔へ向かったよ。まずは塔の中に少し入った所ですぐ、倒れているお前を見つけた。死んでるかと思ったが、隊長の応急処置がなんとかお前の命を繋ぎ止めたみてぇだな」 シノブは唐突に、レンが救出された時の話をし始めた。 ≪シノブ≫「その後階段を登ろうとしたが、隊長に止められた。よく分からねえが、千里眼って力なのか?とにかく隊長には上にモンスターが居る事がわかった。俺達は内部の調査は諦めて、塔の周りを調べる事にした」 レンの顔から生気が失われていく。外には、塔から吹き飛ばされたルチルが居る。息が止まりそうだった。 シノブは見ていられなくなり、先にその事実を話した。 ≪シノブ≫「勘違いしている様だが、ルチルは生きている。…まあ、糠喜びさせない様に先に言うが、意識は戻ってねぇ」
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