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ある日の夜、「塔」で何かが燃えている、という情報が軍に寄せられた。塔は数百年も前に建造されており、歴史的な価値がある為、国によって保護されていた。塔の入り口は管理されており、許可が下りない限りは立ち入る事が出来ないはずだった。空でも飛べない限りは。
情報の入った翌々日の夜、国より調査を命じられたレン、マシュー、ニノ、ルチルの4人の軍人が塔の入り口に到着した。道の途中、遠くに見える塔の真ん中辺り、地上50メートル付近でオレンジ色の煌めきを確認していた。
≪マシュー≫「ここまで近づくと分かるが、中は広そうだ。モンスターが棲みついてもおかかしくない」
≪ルチル≫「モンスターの特定まで必要あるんですかー?調査もハンターギルドに丸投げでいいとおもいます」
≪レン≫「ただの不審火だったら依頼主の国が恥をかくからね。ちゃんと調査する必要があるのよ」
≪ニノ≫「まあその通りなんだが、モンスターのアテは付いてる。大方リオレウスだろ。ルチルちゃんよ、怖かったらここで待っててもいいぜ」
≪ルチル≫「はー?塔に入れるチャンスを逃すとかあり得ないですし」
≪レン≫「この子珍しいものでも拾って帰るつもりね…後で怒られても知らないわよ」
≪マシュー≫「ニノの言う通り、リオレウスくらいしか思いつかんが、とりあえず塔を登るか」
隊長のマシューを先頭に、4人は塔の中に歩みを進める。
夜だというのに、松明を使わなくても塔の中は明るかった。塔に射し込む満月の明かりや、そこらを飛び回る雷光虫の放つ光が原因だろう、とレンは結論付けた。松明はモンスターにこちらの位置を気付かせてしまう可能性がある為、使わずに済むのは好都合だった。
塔の上階を目指すには内壁にある螺旋状の通路を進む必要がある。通路には5メートル程進む毎に高さ1メートル以上の段差があり、これを越えなければならない。20段程越えた辺りで、4人は汗だくになっていた。
≪ニノ≫「疲れた訳じゃねーが、暑くなってきたな」
≪ルチル≫「まだまだ上に続きそうですし、うそだといってよ!」
≪レン≫「半分は過ぎたんだから、もうちょっと我慢しなさい」
この時点では誰も気付いていない。この明るさの光源にも、この暑さの熱源にも、この先に待ち受ける運命にも。
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