偽りの世界

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 動けなかった。私は、動けなかった。本当に、蛇に睨まれた蛙だった。そして男は、まごうことなく蛇だった。  一歩、また一歩と私に歩み寄る。その時間は、少なくとも私には、永遠とも思える時間で。お母さん、早く帰ってこないかな……、と思うほどに。そして、助けて、と思うほどに。  そして、年端もいかぬ私の服に手をかけたそいつは、  ――声を出すなよ。  と、アルコール臭い息を吐きながら私の服を脱がし始めた。
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