偽りの世界

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 当時の私には性の知識など全くなくて、なので脱がされながら思ったのは、犯される、ということではなく、外に逃げて助けを呼ぶことができなくなった、ということだった。  逃げられないことと、これから何をされるかわからないという恐怖。それらが入り交じって、なかば泣いていた私の表情を見ながら、男はただただ、気色の悪い笑みを浮かべていた。  まだブラジャーというものを付ける必要がなかった私の身体は、男のそれよりも数倍小さく感じられ、また、そんな男の手にまさぐられる自分の身体が、まるで他人のものであるかのように現実から一線を画していた。
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