冷たい雨

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 ――わかっていた。  雨が地面を叩く。  ――わかっているのに。  針がささるように身体を打つ。雨が髪を湿らせ、服は肌にはりつき、下着まで濡れている。もしも明日というものが来るならば、きっと風邪をひくのだろう。けれど。  ――もう、いいよね……?  周囲を見渡す……なんてことはせず、足元を覗く。人は米のように小さく、車の走ったあとを示すように水がはねる。  雨も車も人も、慣性にそって「生きて」いる。  だから私も、  慣性にそって、 「死」んでいく。
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