冷たい雨

5/6
前へ
/13ページ
次へ
 ――ふわり  と、ナニカが頬を撫ぜた。  風にしては有機的で、モノにしては無機的な……そもそもそんな大別さえ無意味とさえ言ってしまえるほどの、ひどく些細な違い。  それでも。  ――がしゃん。  背後から消えた音は、無視できなかった。  そして必然、振り返らざるを得なかった。  死というのは、少なくとも私以外には、恐怖、畏怖、あるいはトラウマになるほどの刃をもっている。  眼前で他人が(しかも突発的に)死んでいった日には……などと考える程度に時間をたっぷり(あるいは数瞬。体感時間とは時に絶対時間を狂わせる)かけて、音源を視界に入れる。  景色は、数分前となんら変わらなかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加