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柚希視点
◇◇◇◇◇
「ヤキモチ?」
俺の腕の中から抜けていった馬鹿を眺めていると、いつの間にか隣に来ていた兄貴が楽しそうにそう言った。
ヤキモチ?
…さぁ?
「…どうだろうな」
俺の言葉に兄貴はまた笑みを零す。
「本当、そういうとこ素直じゃないよね、柚希は」
くすくすと笑い続ける兄貴を見ると、目が合う。
「仁は今のところ、叶くんの事をそんな風には思ってないみたいだよ?ただ自分の気持ちに気付いてないだけかもしれないけど」
ああ見えて結構鈍いからね、と言う兄貴に溜め息が出る。
俺が何も言わなくても全てわかってしまう兄貴には適わない。
他人の事に鋭すぎるくらい鋭い兄貴は、弟の俺の事となると何でもお見通しだ。
産まれてこの片ずっと一緒だからかは知らないが、心を読めるのかと疑うほどに。
「ただ、親衛隊が危ないと思っただけだ。」
「仁の所は大丈夫だよ。仁がちゃんと管理してるし、今の隊長は常識人だからね。むしろ仁と叶くんは仲が良いって思ってるから応援してるみたいだよ?」
「…はぁ」
また溜め息が出る。
アイツと会長が仲良い、って事は従兄弟とは知らないのか、親衛隊は。
まぁ知られても大した事はないだろうがな。
「仁にヤキモチ妬いちゃうくらいにあの子に御執心なんだね?」
また楽しそうに笑う兄貴の言葉に、一足先に席に着いているアイツを見る。
その隣に、当たり前の様に腰を下ろす会長に少しだけ腹立たしい気持ちになった。
「そう、かもな」
ヤキモチ、かもな。
少し驚いた顔をした後また楽しそうに笑う兄貴と共に、あの馬鹿と会長の座るテーブルに向けて足を進めた。
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