オノマトペ

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 道雄は便器の丸い穴の、その中に広がる女子の汚物と蛆虫だらけの宇宙を覗き込んだ。    なによりも汚く、しかしなによりも純粋な綺麗さがそこにある。無意識に道雄の唇から、涎がツーッと垂れると、ポチャンと微かな音を立てて小便の水面を揺らした。    道雄は咄嗟に了解した。   「花子さんは、トイレに居るのではない。水糸さんが花子さんなのだ! その証拠に、僕はどんどんトイレの中に引きずり込まれているではないか」    便の臭いをいっぱいに吸い込んで恍惚の表情を浮かべる道雄は、便器の中の水糸さんの汚物の許へ、どぼんと飛び込んだ。
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