《第1話・はじめましての歌》

4/7
前へ
/11ページ
次へ
私は課題をしながら、恵さんの事を考えていた。 『すごい、綺麗な声だったなぁ。』 恵さんは高1らしく、当時の私にとってはすごく大人に感じた。 『あ~、あ~、ア~。』 少し真似てみようと、胸に手を当てながら声を出してみた。 だが、声は思うように出ずに掠れていた。 『んー、私には無理だ!』 そう項垂れて、私は恵さんの歌を思い出していた。 初めて人の声で感動した。 初めて人の声で胸が熱くなった。 『私も、頑張ればあんな声を出せるのかなぁ?』 普段なら、私は絶対にこんな事は思わなかっただろう。 多分、生まれて初めての感動なんだと思う。 『よし、寝よう。また明日になれば、恵さんに会えるんだ!』 それを楽しみに、私はベッドに入った。 その日の夜は、ものすごく長く感じた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加