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私は課題をしながら、恵さんの事を考えていた。
『すごい、綺麗な声だったなぁ。』
恵さんは高1らしく、当時の私にとってはすごく大人に感じた。
『あ~、あ~、ア~。』
少し真似てみようと、胸に手を当てながら声を出してみた。
だが、声は思うように出ずに掠れていた。
『んー、私には無理だ!』
そう項垂れて、私は恵さんの歌を思い出していた。
初めて人の声で感動した。
初めて人の声で胸が熱くなった。
『私も、頑張ればあんな声を出せるのかなぁ?』
普段なら、私は絶対にこんな事は思わなかっただろう。
多分、生まれて初めての感動なんだと思う。
『よし、寝よう。また明日になれば、恵さんに会えるんだ!』
それを楽しみに、私はベッドに入った。
その日の夜は、ものすごく長く感じた。
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