‐Prologue‐

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 メガフロート《A10》=世界初の重量子反応炉搭載型メガフロート(人工島)。  大手重工企業の最重要生産ライン。居住者は全て労働者。島と言うより大規模な工場――大まかな情報と任務内容を、陰鬱な赤色のランプが灯る貨物室の中で反芻する黒装束の男。  反芻――メガフロート占領事件の発端。  今から六時間前、貨物に紛れて侵入した武装集団が《A10》を占拠。外部からの通信手段は全て遮断され、未だに被害状況すら把握できていない。  四時間前――沈黙を破る犯行声明。  “我々は開拓精神の元に、多くの貧困国を事実上の植民地へと堕とす、悪しき支配の連鎖を生む尖兵に鉄槌を下すべく立ち上がった”  “我々は尖兵どもに不当に搾取される貧困国への無条件撤退を要求する。奴らの存在は貧困国を蝕む癌に等しく、早急に排除されるべきである”  “この要求が飲まれない場合、我々はこのメガフロートの中核たる重量子反応炉を臨界爆破する。もたらされる業火の勢いは、貴様らの知るところであろう”  “猶予は四時間。懸命な経済主体である筈の貴様らの懸命な返答を待つ”
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