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隆は舌打ちすると、バケツを乱暴に蹴飛ばし、また竿へと視線を移した。
竿がしなっている!
すぐさま隆は竿を手に取り、獲物を引き揚げる。
しかし獲物の姿に隆は愕然とした。糸の先には……またあのレプトケファルスもどきがついていたのだ。
そのままバケツに放り込み、次の竿を引き揚げる。
駄目だ。コイツも駄目だ。
次も。
次も。
次々と甲板の上にグロテスクな魚が引き揚げられる。
何故だ!
他の魚が一匹も掛からない!
一体どうして……。
忌々しげに隆は時計に目をやった。もうそろそろ切り上げなければ、出産予定時刻に間に合わなくなる。
「くそッたれ!」
隆は一声吠えると、甲板の上に転がったレプトケファルスもどきをビニール製の長靴で踏みつけた。
なんとも言えない音を立てて、そいつはあっさり潰れた。口から緑色の内臓が飛び出し、辺りに据えた臭いが立ち込める。
「くせぇな、この野郎ッ!」
腹いせにバケツの中のレプトケファルスも甲板にあけ、続けざまに靴で踏み潰す。
カエルを踏み潰すような感触と音が船の上で響く。やがて甲板は何匹もの魚の死骸で埋め尽くされた。
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