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高橋和美は美人だった。切れ長の瞳、通った鼻筋、形の良い唇、艶やかな黒髪。
一流企業の受付嬢で、スタイルも抜群、通りを歩けば誰しもが和美を振り返った。
身に着けるものは、数々の男から貢がせた一流ブランド品ばかり。GUCCI、PRADA、Dior、VUITTON等世界の一流ブランドで身を固めていた。
職場では当然、全男性社員のマドンナであり、誰しもが和美と付き合いたい、と内心思っていたのだ。
そんなにもてはやされるのだから、性格が悪くなるのは、必然だった。
自己顕示欲旺盛、自意識過剰。遅刻、早退、無断欠勤は当たり前。男性社員に好かれる一方で、女性社員には裏で嫌われていたのだ。
一方、同じ会社の経理部に務める高橋妙は悲しいかな、不細工だった。
重く垂れ下がった瞼、低い団子鼻、分厚い唇。
スタイルはくびれらしい物が見受けられず、その歩く姿はドラム缶の様だった。
当然、男性の誘いなど皆無で、生まれてこの方、異性と付き合った事など無かった。
性格も、内気で消極的、自分に自信が無く、和美とは正反対であった。
この対象的な二人はそれぞれ『美高橋』『ブ高橋』と裏で呼ばれていた。
美とは美人、ブはブスの略だ。
男という生き物は薄情な物である。和美がミスをしても怒られないが、妙が同じミスをすると、こっぴどく叱られ、時には進退まで求められた。
和美が煎れるコーヒーの味は誉められても、妙が作成した、業務効率を上げるプランは誉められなかった。
会社にとってどちらが有能な人物かは明白なのに。
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