美人

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喫煙所に駆け込んだ、和美のはらわたは煮えくり返っていた。 何で!? 何であのブスにあのバッグが当たるの? タバコに火を付け、乱暴に煙を吐き出す。 ブスのクセに。ブスのクセに。ブスのクセに。 あの限定品のバッグ!あれを持つのに相応しいのは、この会社では私くらいの物よ! 苛立ちが抑えられない。 排煙機に向かって八つ当たりの蹴りを入れるが、それでもイライラは消えなかった。 だからと言って「譲ってくれ」なんて言葉は、和美のプライドに賭けて、口に出来ない。ましてや、『美高橋』の和美が『ブ高橋』の妙に向かって頭を下げるなど、屈辱の極みだ。 和美はしばらくの間、眉間に皺を寄せて、考えていた。 やがてその顔には満面の笑みが浮かぶ。 そうよ。別にあんな物要らないわ。 だけど、私が持ってない物をあんなブスが持っているのは、何か間違っているわよねぇ。 和美は口の端を釣り上げて、自分の考えにほくそ笑んだのだった。
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