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次の日、社内を妙な噂が駆け巡った。
妙のロッカーが荒らされ、ビンゴゲームの賞品であるVUITTONのバッグが滅茶苦茶に切り刻まれていたというのだ。
その噂を聞いて、和美は他人事のように言った。
「まぁ、怖いわ。最近物騒になったわねぇ」
しかし、内心、声高に笑っていたのだ。
ざまあみろ、と。
犯人は和美だった。
ロッカーの鍵を警備員から借り受け、就業時間中に妙のロッカーを開けて、カッターで切り刻んだのだ。警備員には口止め料を渡して絶対に口外しないように、と言ってあった。
自分の物にならないなら、要らないわ。あんなバッグ。
心の中でそう呟いて、何時ものように、自分のロッカーを開けた時、何かがひらりと舞い落ちた。メモだ
何かしら?これ。
何気なく拾い上げて中を覗いた和美は、一瞬、凍り付いた。
そこには
『昨日の件でお話があります。詳細は昼休みに屋上で。高橋妙』
と書かれていたからだ。
馬鹿な。バレる筈が無い。そんな筈は……。
和美は自分の体から血の気が引いていくのを感じた。
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