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そして昼休み。
呼び出された通り、和美は屋上へ向かった。
妙は既に屋上へ来ていた。
妙の長い髪が風にたなびき、顔に覆い被さっている。
前髪の間から、憎しみを込めた視線が向けられ、それは妙の容貌と重なって威圧感さえ醸し出していた。
「一体何の用?こんな所に呼び出して」
和美は腕を組んで妙の顔を睨み付けた。
醜い顔だ。
その醜い顔が、上目使いにこちらを見ている。和美としては、食事前に見るのは勘弁して貰いたい顔だった。
「どうして?」
妙の分厚い唇から、言葉が漏れる。普段のもごもごとした話し方からは想像もつかない程、はっきりとした口調だった。
「は?何の話?」
和美は内心、ドキリとしたが、如何にも何も知らないと言いたげに聞き返した。
「昨日の賞品のバッグ。ズタズタにしたの、あなたでしょ」
ドクン。和美の心臓が、跳ね上がった。
何で?どうして知ってるの?
はったりだ。分かる訳が無い。
和美はあくまでも白々しく話した。
「何の事かしら?私には全然……」
「私のロッカーに受付用制服の腕のボタンが落ちてたわ。今日1日ボタンの無い人を探したけど、あなたしか居なかった」
和美は心の中で舌打ちした。バッグを引き裂くのに夢中で、どこかに引っ掛けてしまったのだろう。
しかし、まだしらばっくれる余地はある。
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