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十分程の沈黙。
その間、コトリはずっと男を見つめている。
「ねぇ、ビービー」
「………………なんだ」
「よんだだけ~」
ニコニコ。
イライラ。
──全くもって、全くもって、イライラする。何なんだ、この少女は。
「何なんだお前は」
「オマエじゃないよ、コトリだよ」
ニコニコ。
男はため息をついた。
「……何なんだ、何者なんだコトリは。何で俺に付きまとう」
コトリはハッとして何かに気づいた顔すると、右手を高く上げた。
「シラトリコトリ、十五歳!! 私、ビービーと一緒にいなきゃいけないの!!」
十五歳。
誰の目でもそうだとは見えない。
どう考えても、見た目は十二、三歳で中身は小学校低学年だ。
それに、シラトリコトリという名前。
白鳥小鳥ということか。 だとすれば、親は随分痛い名前を娘に付けたものだ。
「どうして一緒にいないといけない?」
「う~~~~。わかんなぃ、でも一緒にいなきゃいけないの!」
やれやれ、だ。
小鳥と話しているとイライラが募る。
なら、早く眠ろうと男は思った。
まだ目が覚めてから二時間程たったぐらいだが、男は眠くなってきていた。
そういえば今、何時だろうか。わからないことだらけだ。
とりあえず横になろうとしたところで男は気づく。
眠るには小鳥に身体を寝かしてもらわないといけない。
「悪いが身体を寝かせてくれ」
やはり、人にものを頼む態度ではない。
「ビービー、寝るの?」
「ああ」
小鳥は男の身体を半ば倒すような形で寝かせた。
「私も寝る!」
と言って小鳥は男の布団にもぐりこんだ。
「おい、やめろ」
少女は聞いていない。いや、聞く耳を持っていなかった。
「ビービー、あったか~ぃ」
男は気にしないことにした。
なるべく小鳥のペースに巻き込まれないようにしようと思い始める。
そして男は薄れゆく意識のなかで考えた。
これから自分はどうなるのだろうか。
身体は動くようになるのか。
記憶は元に戻るだろうか。
明日になれば、何か変わるだろうか。
──わからない。……わからない。
男は横に小鳥の視線を感じながらも、眠りについた……。
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