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「やってみよう」  カタ、カタタ。  史治の眉間に皺が寄る。 「む……」 「見つかったか!?」 「あ、いや違ったようだ。ごめん」  なんだ……。 「……そうか」  三回、四回目になるキーボードを叩く音が響く。  なかなか見つからない。  いたずらに時間だけが過ぎていき、このまま何一つ分からないまま終わると思った二十回の音で、再び史治の表情が変わった。 「見つかったよ。灰田琴莉ちゃん、十五歳……」 「ちょっと待て、爺さん。ハイダコトリだって?」 「間違いないよ、ほら」  言って史治はパソコンの画面を男に向ける。  画面を覗くと、確かに小鳥だった。  いまだに林檎を食べている小鳥の顔と比べ、表情も雰囲気も硬いが間違いない。  見ると写真の下に小さく、灰田琴莉(15)とある。  コトリを『小鳥』だと勝手に思い込んでいたが『琴莉』が正解らしい。 「おいコトリ、シラトリってのは嘘だったのか?」  コトリは林檎をがぶりと口に含みながら答える。 「嘘じゃないよ。ビービーも食べる?」  もごもごと言いながらコトリは自分がかじった残りを男に差し出した。それも握りしめながらである。  男は二つの意味で軽い頭痛を覚えた。 「いらん。……とりあえず爺さん、コイツの家に連絡を入れよう」 「わかった、だけど先に連絡先を聞かないといけない」 「誰に? サイトに書いてないのか?」 「こういう行方不明者捜索サイトはね、個人情報保護のために住所や、連絡先といったものは書かれてないんだよ」  だから、と史治は息を吸って続ける。 「このサイトの管理者に聞かないと連絡先が分からないんだよ」 「そうだったのか」  史治はパソコンの向きを戻し電源を切って立ち上がった。 「それじゃあ電話をしてくるから」 「ああ」  再び、コトリと二人きりになる。 「なあコトリ、お前は記憶を取り戻したいとか、家に帰りたいと思わないのか?」 「ビービーが、ずぅ~~っといっしょにいてくれればいい!」 「お前の家族が心配するだろ」 「……!! ビービー、心配してくれるの?」 「俺はお前の家族じゃない」  半ば怒鳴るように言ったが、コトリは全く聞いていない。  にひひ、ふふふ、と笑い、別世界に入ってしまったようだ。
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