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*  コーヒーのせいでなかなか寝つけなかったが、すっかり眠ってしまったようだ。  日頃疲れとは恐ろしいものだ。  すでに時計は夜の八時を指していた。  この時間だと二人はとっくに家に帰ってきているだろう。  食器の片付けと洗濯ものを取り込む件について詩織に怒られることを想像しながら、陣はしぶしぶベッドから起き上がり、階段を降りていった。  しかし、二人の姿はなかった。  テーブルの上には、陣が今朝コーヒーを飲むために使ったカップがそのまま置かれている。  庭には洗濯ものが干しっぱなしになっている。  どうやら二人はまだ帰ってないようである。  陣は携帯を見たが連絡は入ってなかった。  これだけ遅くなっても連絡を寄越さないのは珍しいが、こんな日もあるだろうと思った。  それよりも今は食器の片付けと洗濯ものを取り込むのが先だった。  それらを素早く終わらせた陣は二人のために久しぶりに台所に立って夕飯を作り、待つ。  待つ。  待つ。  待つ。  時間が経ち、時計は十時を示した。  遅い。  どう考えても遅い。  連絡の一つもないのだ。  陣は詩織に電話をかけてみたが繋がらない。  真も同様だった。  陣は 今までに感じたことのない不安に包まれていた。  落ち着かず、冷や汗がながれる。  こんな気持ちになったのは、両親が事故にあったと聞かされたとき以来だった。  陣は職場に電話をかけた。  はい、こちら・・・、と名乗る相手の言葉を陣は遮った。 「もしもし、白鳥です。そちらに真はいるでしょうか?」  相手は自分と真を雇ってくれた上司だった。  「ぉぉ、陣くんか、真くんなら七時ごろに帰ったよ。まだ帰ってないのかい?」 「あ、いえ、いないなら別にいいんです。仕事中すみませんでした。」 「ブラコンも大概にしとけよ、嫌われるぞ。じゃあ、明日はきてくれよ」 「はい、お疲れ様です」  電話を切った瞬間、自分の身体から血の気が引くのを感じた。  二人とも大人だ、上司の言う通り心配し過ぎなのかもしれない。  だが、嫌な気持ちが、悪い予感がしてならない。  玄関に置いてあるヘルメットをとり、陣は外へ出た。  家を出てすぐ左側にある駐車スペースに、バイクが置かれている。  SUZUKI SKY WAVE250 TYPE-S  陣の愛車だ。  詩織と真が、陣のために買ってくれたものだ。
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