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*
自動車は結構なスピードが出ていた。
長時間の運転で疲れ始めていた陣にとって、それに着いていくのはなかなか大変である。
しかし、それ事態は問題ではない。
真はどんなに急いでいる状況でも、いくら空いている道であっても、こんなスピードは出さない。
つまり何者かが運転してることになる。
詩織、真、無事でいてくれ…………。
もはや、陣の焦りと不安はピークに達していた。
そのため陣は、車が主要道路を外れ、段々人気の少ない所へと入っていることに気づかなかった。
不意に車が止まった。
そのときにはもう、周りは人の気配がほんの少しもない廃工場らしき場所だった。
運転席と助手席から二人の人間が出てきた。
詩織と真ではない。
見知らぬ男たちだ。
「まさか後をつけてくる奴がいるとはな」
身長は170ほどだろうか、陣と対して変わらない。
がっちりとした体つきと威厳と風格のある声が特徴的だった。
「何でつけられちゃったんでしょ~ね~」
もう一人の男は180は超えているだろうか。
飄々とした態度と口調が癪にさわる。
「俺に聞くな、屑。」
「ちょっと聞いただけじゃないっすか~」
陣に二人の会話は聞こえなかった。
バイクから降り、ヘルメットを外すのももどかしく怒鳴り散らした。
「お前ら、詩織と真をどうしたッ!!」
「ど~やら最初に捕まえた男女の知り合いみたいっすね~。……殺します~?」
「いや、捕まえろ。任務は四人と言うことになってる」
はいはい 、と飄々とした男が言った瞬間。
ロープだろうか。
五本ほど細長い何かが、飄々とした男の手元から現れると陣の顔に巻き付いた。
声を出す間もなく、陣は意識を失った…………。
*
記憶が淀み、漂っている。
思考がまとまらない。
赤く強い光だ。
それよりも、詩織と真は。
声。
……ディ01の心拍が停…………
詩織と、真は。
また、声。
……02……題ない……中断し……
詩織……真……。
しお……り…………。
また、意識を失った。
*
円形の蛍光灯の光で、
男は目が覚めた。
──何故俺は眠っていた?
俺は何を?
いや、俺は。
「俺は、誰だ?」
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