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30過ぎても独身でいる女友達は、そう多くはなかった。
独身主義を気取っていた者でさえ、30の声を聞く頃にはバタバタと結婚して行った。
28、29、30の3年間は、ご祝儀貧乏になるのではないかと思う程友達の結婚式が続き、郵便受けに届く白やら薄桃色の封筒を見ると、恐怖すら感じたものだ。
しかし、そこまでは晶子も『まぁ、仕方ない』で済ますことが出来た。
晶子が25才で盛大な結婚式を挙げた時に、彼女達は内心は嫉妬でドロドロになりながらも精一杯のお洒落をして、披露宴に出席してくれたのだから。
良隆は、友人達が晶子に嫉妬せずにはいられない程の美男子だった。
友人達が金屏風の前の花嫁ではなく、良隆ばかりをチラチラと盗み見ているのを知り、晶子は優越感に酔いしれた。勿論彼女達が、裏で何と言っているかも承知の上で。
『お父さんのお陰でしょ』
『部下に自分の娘を引き合わせるなんてズルくない?』
『上司の娘を断ったら、自分の将来に響くもんね~』
それがどうした?と晶子は叫びたかった。
悔しかったら有能な父親を持ってみろ、悔しかったらこんな素敵な男と結婚してみろ――
所詮負け犬の遠吠えにしか過ぎない友人達の陰口は、晶子にとっては賛美の言葉と同じだった。
有能な父親の娘であったから良隆と結婚出来たのかもしれない。しかしそれが何だと言うのだ。
その境遇も含めて私なのだ。そんな私を良隆は選んだのだ。
『あなた達ではなく、この私を』
晶子は、祝辞を述べた後に下手くそな歌を披露している友人達に優し気な微笑みを向けながら、心の内で叫んでいたのだった。
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