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それでも晶子は特に気にはしなかった。
子供がいないのを良いことに、独身と変わらない自由さを身にまとい、現に独身の友達と昼夜構わず遊びに出かけていたのだ。
ところが結婚ラッシュの後の出産ラッシュで、晶子の遊び相手が激減してしまった。
そればかりではない。
『子供は可愛いわよ~。晶子も早く産みなさいよ』
『子供を産んで、やっと一人前になった気がするわ。晶子のとこはまだ?』
などと、勝ち誇ったように友達から電話がかかってくるのが晶子には我慢ならなかった。
年賀状に子供の写真を入れる神経も腹立たしかった。
(こんな可愛げの無い子供の写真をよくも年賀状に出来るもんだわ! 見てなさいよ、私だって)
無邪気に笑う子供の顔にさえ悪意を感じた。母親という栄冠を手に入れた友達が、まるで自分を嘲笑っているようで、悔しさのあまり晶子は年賀状をぐしゃぐしゃと握り潰した。
それから晶子は、妊娠を望むようになったのだ。
基礎体温を計り始め、排卵日前後には執拗に良隆をベッドに誘った。
最初はまんざらでもなさそうな良隆だったが、しばらくすると気乗りがしないという素振りを見せるようになった。
『ごめん……仕事が忙しくてクタクタなんだ』
排卵日よ……と、やる気満々でギラギラと待ち構える晶子に、そう良隆が断ることが多くなっていくのに、たいして時間はかからなかった。
そればかりか、気がついた時には良隆の方から晶子を誘うことさえ無くなっていたのである。
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