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出産ラッシュの後しばらくしてやってきた電話攻撃に、徐々に晶子の妊娠願望は萎えて行った。
始めの頃こそ『子供は可愛い』『母親になるって良いものよ』と口を揃えて晶子の気持ちを逆撫でし続けた友人達が、少しずつ晶子を羨むようになってきたのだ。
『毎日子供の相手で、自分の時間なんてないのよ。出掛けるって言ったって、食料の買い出しが精一杯。素敵な服を見つけても、ゆっくり試着も出来ないんだから……晶子は自由で良いわよねぇ』
午前中から電話をかけて来ては愚痴り続ける友達に、晶子は再び優越感を持つまでになった。
すると、そんな愚痴を聞き続けることに、ほとほと嫌気がさしてきたのだった。
出掛けることも出来ずに、電話で愚痴ることしか楽しみの無い子持ちの友人達に見切りをつけ、晶子は独身の友達と遊ぶようになった。
なかでも斉藤 望(さいとう のぞみ)とは昔から気が合うこともあり、連れ立っては頻繁に飲みに行ったり、温泉旅行にも出掛ける仲だった。
週に何度も夜遊びをしている晶子に、望はたまに冗談めかして言ったものだ。
『こんなに夜遊びばっかりしてたら、旦那さん浮気しちゃうんじゃない?』
望に半分は本気で心配している節があると見てとると、晶子は高らかに笑った。
『大丈夫よ~。毎晩疲れ果てて、子づくりする元気もない人が浮気なんてするもんですか』
家で待っていたところで、毎晩残業やら接待やらで良隆の帰りは深夜になる。
良隆自身も、夕飯は外で済ませてくることがほとんどなのに、毎日夕飯を作って待たれているのが申し訳ないと言っているのだ。
晶子はそんな良隆を優しい夫だと思った。
極めつけに良隆は言った。
『夜中まで晶子が1人で留守番してると思うと心配だよ。望さんと一緒なら安心だし、晶子も淋しくないだろう。僕もむしろその方が、安心して仕事が出来るよ』
と……。
晶子は『本当に優しい夫なのだ』と望にのろけた。
望は『ご馳走様』と微笑む。
しかしそれでも思い出したように『旦那さん、浮気は大丈夫?』と晶子に尋ねるのをやめない望だった。
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