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少年が手を洗い、顔を洗うのを待ってから洗い終わるとハンカチを取り出して顔や手から水分を拭きとった。
「ありが……とう」
「うん……戻ろう」
水分を拭き取って、少年と一緒に海翔の座るベンチに向かって横に並んで歩いていった。少年は物欲しげに七海の方を見つめていたのだがそれに気が付くことなくベンチにまで辿り着いた。
「ん、おかえり」
海翔はベンチの隅に必要なもの以外を寄せて、二人に座るようにベンチを叩いて促した。帰って来た二人は海翔を端のままで少年が真ん中になるような位置で座り込んだ。
「どうぞ」
海翔からハンバーガーを詰めた紙袋が差し出されてもオドオドとして受け取らない。そこで、七海が代わりに受け取って中身を取り出して少年に手渡した。
「あ――」
「どうしたの……?あ、味……?」
「いや、一人二種類のつもりで買って来たから――」
動揺したのはそれが海翔が自分用に買ったピクルス抜きの目印が付けられた包み紙だったからだ。食べれないわけではないが苦手ではある。だが、他人の食べる分を勝手に抜くのはどうかと思ったのだが。
「……いただ……きます」
間が悪いと言うか、ここで取り換えを申し出るのが凄くみみっちく感じられて交換を申し出るのを躊躇った。申し出れば悪気があったわけでもないのに謝ったりしづすような予感がした。
それで、海翔自身は黙ってピクルスの入った普通のバーガーを二種類とも手に取る。
「磯貝さんもどうぞ」
「あ、後で代金を」
「いいよ、携帯代を食べた分だけまけてもらえば」
七海は言っても無駄だと悟ったのかハンバーガーの包みを開いた。内心では海翔に内緒で形態を購入しておこうと改めて決意した。今日は携帯電話があれば便利だと思わされた事もなんどかあったのもある。
「いただきます」
七海にとってハンバーガーは食べ慣れている食べ物であった。特に好物ではなく、箸もフォークもスプーンも要らずに機械的に口に運ぶだけで済むのでよく購入しているだけの話だ。
「大洋くん……?」
その時、ツンとした匂いが鼻を刺して目をそちらへと向けた。すると本来ケチャップを掛けられているであろうはずの挟まれているパテが黄色に彩られていた。パンをのけて掛けられている調味料はマスタードである。どうやら、わざわざ掛けるためだけにチューブを購入したらしい。小型ではあるが二回で使い切る量ではない。
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