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海翔はマスタードまみれのハンバーガーを無表情でままもっきゅもっきゅと音を立てて咀嚼していた。
「大洋くん……あの――」
「いる?」
マスタードのチューブが差し出されたが七海は黙って手を掌を突き出して遠慮の意志を示した。海翔はそれ以上は進めずに少し残念そうにチューブを引っ込めて二つ目のバーガーの包みを開いてかけ始めた。
七海は海翔の方から目を反らして少年の方へと視線を移していた。我慢していたものが取っ払われたのか勢いよくガッつき頬張り飲み込んでいった。だが、それが祟ったのか胸につかえたのか叩き始めた。
「あぁ……ッ!」
「飲み物はそっち――」
そこに海翔は七海の側の白い袋へと指をさした。包帯の類が入った袋の側におかれたもう一つの袋でその中には飲料水の類が入っている。
「こ、これ……ッ!」
その中にあったココアのボトルの蓋を開いて、少年に持たせる。少年は貰ったココアを喉の奥へと流し込む。それでつかえたものを流し込んだのか少年は息を整えた。
「大丈夫?」
「うん……」
今のに懲りたのか少年の食事スペースは落ちて、ゆっくりとした者になった。七海はゆっくりと食事を続ける少年の背中をゆっくりと擦る。
「後で新しいの買お……」
海翔は二人に聞こえない様に呟くと本来は自分用ではなかったコーラを手に取った。
味にこだわりはないのだが甘すぎずほんのり苦いバランスになったさっきの味のココアは気に入っていた。因みにちっちゃい子供なら甘いのは好きだろうと思って買ったコーラは苦手だ。
「あ、磯貝さん。どっちが好き?」
「あ……こっちの方が……」
なんとなくのイメージで紅茶を買ってきていたのだが七海はそちらの方を選んだ。コーラよりは紅茶の方が好きなのだが諦めてコーラの蓋を開けて喉に流し込む。だが、あまり好きな味ではないので口へ含んだ瞬間に二人に顔を背けてから顔を顰めた。
「ふぁ……」
「お腹、ふくれたか?」
「うん……」
それなら良かったと海翔は食べ残し及び飲み残しを元の袋へと詰め込んでいく。
「あ……僕のゴミも……」
「ん?どこに……ゴミを――」
少年は上着を脱ぐと、その下にペシャンコのリュックサックが背負われていた。リュックを下ろすと少年の鞄の中には食料だったと思しき包み紙が入っている。ただ、銀の無地の包みで何が入っていたかが全く分からない。
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