第4話 天贈-ギフト-

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「クッキー状の欠片――」  これだけを食べて持たせていたという事はバランス栄養食かなにかではないかと海翔は考えた。子供の身体なら小さい分エネルギーの許容は少ないだから栄養の摂取量も少なめで済む。  ただ、どこから持ち出したのかが気になった。売っていない状盗み出すのは不可能、少年が上着の内に背負っていたリュックは無地の銀色で非難セットを思わせるものだ。 「きみはどこから来たの……?」  海翔の質問に七海は先程、少年が「家に戻りたくない」と言っていたのを思い出した。少年は身体を震わせながら俯いて口を噤んでしまった。 「大丈夫……?」 「うん……」  震える少年の背を七海は撫で続ける。海翔は無理に追求しようとはせずに黙ってしまったためにこの場は再び沈黙した。腹ごしらえはした、それは良いがこれから先に少年はどうしようかはまだ決まっていないのだ。 「あ、そういえば……大洋くんはお巡りさんを呼びに行ったんだよね?」  だが、ここで七海は海翔が最初に何をしに出ていったのかを思い出した。戻った時に海翔が一人だった時点で違和感は既に感じていたが海翔が倒れてしまったことでそのことについては有耶無耶になってしまっていた。 「大洋くん……?」 「逃げなかったでしょ――」 「え……?」 「俺は結局、二人を信じ切れなかった。でも、証拠なんてものもない。でも、どうすれば信じられるかって思った――」  だから、冷たさを込めて言い放った。警察に突き出されるかもと思わせて、それでも逃げなければ無実なのか少なくとも心から反省していると思う事が出来ると思った。 「良かった、信じてくれたんだ……」 「分からない――」  結局、今も海翔の中で少年を無実かどうかと信じ切ることが出来たかどうかと言われれば肯定する事が出来ていない。理論武装を重ねて辿り着いたのは別に裏切られても良いという投げやりじみた答えだった。 「そっか……」  内心で何を思うかを海翔から聞かされても七海の中で海翔への失望はなかった。何度も助けてもらった恩と、彼も七海と同じようにマイナス思考なのが分かり切っている為だろうか。 「あの……」  そして、少年の方も同じく微塵も失望などしていなかったようでベンチから立ち上がり海翔の前へと回り込んでペコリとお辞儀をした。  
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