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「少し遠いな……まだ、歩ける?」
「わたしは大丈夫だけど」
「へ、へーきだよ……」
七海が手を繋いでいる少年の方を見る。いくらか腹にいれたとはいえ散々走った後だけに口とは裏腹に疲れているようだった。
「無理しなくていいよ……俺、なんかクラクラするし……」
「大洋くん……それ、血が足りてないんじゃ――」
幸いにも植え込みを囲うベンチが近くに合ってどれも空いているのでそこに歩いていって腰を下ろした。
「背中の傷、やっぱり無理をして――」
「いや、あのフォームを使いこなせていないせいだ。エネルギーが暴発するのに精一杯で消耗が激しくて……」
これは強がりとか励ましではなく本当の事ではある。アーマードフォームとか言うあの姿の力を抑えきれていない。その結果、出力は暴発寸前で消耗は著しく激しくなってこの様を呈することになる。
出血量が少なかったわけではないのだが、制御しきれないことによる余分な消耗が大きく占めているのだと海翔は感じていた。
「ごめん、磯貝さん。ちょっと、頼まれてくれないか。あそこのドラッグストアで……」
海翔が財布を取り出そうとすると七海はそれを手で制した。
「ううん、今度はわたしが出すよ。さっきも出してもらったし」
そう断って七海は近くのビルのテナントのドラッグストアに駆け込んでいった。あそこは海翔が二人の基へ向かう前にガムテープ以外の応急処置のための道具を買った店でもある。
「情けない……」
カロリー優先でハンバーガーを頬張ったのは自分だけ選り好みしているのを見せたくなかったからだが、手間をかかせるのなら最初っから買っておけばよかったとまた申し訳なさそうに俯く少年を見て思った。
「そうそう、聞きたいことがある」
「う……?」
七海に買い物を頼んだのは人払いでもある。少年に聞きたいことがある、七海に聞かれるのは不味いわけではない。だが、この手の質問は配慮は必要だ。
「トンネルに居た時の事だけど……君、ウォーマ――あの怪物の存在に気づいてた?」
疑問とは海翔がウォーマを感知するのと同時に少年が怯える様子を見せた時の事。そして少年は思い当たる節がるのかギョッとして、手を固く握りながら首を縦に振って肯定した。
「気配が分かるの?」
「分からない……ただ、分かった……良くないものが……くるって」
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