第4話 天贈-ギフト-

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「良くないものかぁ……」  何度もウォーマの気配を感知している海翔ではあるが、気配自体に少年が言うように「良くないもの」と感じる事は無かった。  人間の持つ五感と違う感覚であることは間違いない。海翔は自身と少年が感じたものは同じとは限らないが少なくとも感知をした対象は同じだと考えている。  同じ対象から違ったものを感じ取った。それも、感じただけで嫌悪感を感じるようなものを感じただけの話だと。 「どうも、こういうのは感じ取れる方が特殊らしいね」 「うん……」  ウォーマなんてもともと常識外の存在だ。誰も知らない、見たことのない、聞いたことのない存在。ならば実際に接触してみないと気配を感じ取れるかどうかなんて分からない。確かめるまで感じ取れるかどうかは五分五分――最初、海翔は自分だけしか気配を感じ取れることができない等と思いもしなかったのだ。 「あの人に話して……平気かな……」 「俺も言えてないな――」  話すことを考えた一瞬、不安を胸が過るのを感じた。他人に感じることの出来ないものを感じる事を彼女に話してどうなるかを考えた。異物として拒絶されるかもと想像してみると言い知れない気持ちになるのを感じた。「これが『友情』……なのか……?」  なし崩しの友情に困惑するのは友情の概念に畏まったものを感じている裏返しであった。ただ、憧れてる訳でなくソレがスタンダードなら自分には手の届かないものだという諦観であるが。  海翔とは改めて七海のことを考える。友情とか抜きにしても先日は彼女に助けてもらったし悪感情を感じていないことを改めて確認した。だが、それでもこの感知能力を伝えるのに躊躇を感じるのは事実だ。 「お、お待たせ……!」  その時、七海が白い袋を手に提げてこちらにやって来るのが見えた。短い距離にも関わらず全力で走ったのだろうか息を切らしてる。その顔を見て結局、信じきることが出来ない自分が弱いのだと結論付けた。ただ、会ったばかりの少年くんに関しては信じきれないのは無理もないと思った。 「ありがとう……」  素直に礼を言ってゼリー飲料を開封して口に着けた。口に含んだゼリーを中断した思考も一緒に飲み込んだ。すると、少年が海翔の袖を摘まんで引っ張ってきた。そして海翔に耳打ちをする。 「?」  七海は不思議そうに見ているだけだった。聞かれたくないからひそひそ話をしているのであるが。
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