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「な、なんで……」
「お前ッ!!!」
海翔が怒号を上げて流良の胸倉へと手を伸ばす。七海の行動への驚きで隙だらけだったが、海翔に胸倉を掴まれた瞬間にハッと我に返り腕をつかみ返して引き離す。
「うぉぉぉっぉぉぉ!!!」
「ぐっ……!!」
そこから流良は海翔を背負い投げ、コンクリート製の路面に容赦なく背中を叩きつける。いや、叩きつけたと言うのは正確ではない。直前に手は離され海翔は空中へと放り出されて路面に叩きつけられ転がる。
「大丈夫……?」
「うん……」
「なら、その子連れて逃げて」
今までなら迷ったかもしれないが、少年が一緒なために七海は迷うことなく手を引き駆け出した。それを「待て!」と叫んで流良が追いかけようとするが海翔が足を振り上げた。
「ぐあぁッ!!」
流良の胸に勢いよく足底が叩き込まれて勢いを殺し、後退させた。起き上がった海翔は追撃を掛けようとするが後ろから警官に羽交い絞めにされる。
「お、落ち着いてッ!」
流良の方ももう一人の警官によって背後から羽交い絞めにされている。だが、流良は警官を簡単に振り払って海翔に距離を詰め拳を打ち込んだ、更に手が塞 がっていることころへ何発も打ち込む。
「ドラァ!!」
「グっ!?」
しかし、そこに海翔の脚が振り上げられ流良を蹴り飛ばした。倒れ転がるがすぐに起き上がり拳を振り上げて再び向かってゆく。だが、海翔も黙って殴られるつもりもなく拳が突き出される前に再び蹴りだす。
「うおおおお!!!」
「埒があかない、放してください!!どっちの味方なんだ!!」
「で、でも、この人悪い人には見えないし――」
警官は戸惑っているのか海翔を放さない。羽交い絞めにされたまま海翔は足だけで充分と言わんばかりに流良をあしらう。そこへ振り払われた警官が再び流良を羽交い絞められると海翔は放される。
「すいません……交番の方でお話を。あの、そのあちらの方はお話とかできそうにないので……」
「……分かりました」
警官は暴れている流良よりも静かな海翔に何を感じているのか怯えているようだった。暴漢を何人も取り押さえてきた経験から来る直観が海翔を暴漢とは違う危険なモノだと知らせていた。
素直に着いてくるので邪推するのは止そうともう一人の警官と一緒に流良を抑え込み海翔も一緒に交番まで誘導していった。
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