第5話 集束-デュアルウェーブシステム-

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 時は少し遡る、この場所には複数の装甲車が止めてある。装甲車の前には男たちが隊列を組んで立っている。そして、一人の男が隊列を正面から見据えて口を開いた。 「諸君、召集された意味は言うまでもないとわかってはいるとは思う。本来、我々『RUNS』はライダーシステム適応戦闘員‐カイゾーグ‐の戦闘補助を目的としているがロールアウトが遅れているのは承知の通りだ。 先日に続き反社会的勢力とはいえウォーマの仕業と思しき犠牲者が発見された。更にその現場付近で複数の強いオーシャニックウェーブの反応が確認された。いずれも成体に相当する出力、その内の一体は最近、続けて確認されているウォーマと同じ波長パターンであった。 市街地付近で確認されたこともあり今回、我々は出動することになった。警戒態勢はフェーズ2だが場合によってはすぐにフェーズ4へと移行するだろう」  かなり無茶な話というのは話ている方も聞いている方も思っていることだった。戦闘になれば市民の避難は必須、だが警戒レベルが低いゆえに非難指令を出すことが出来ない。戦闘の名目は敵性体を抑えて避難を促すことではあるのだが。  一番無茶を感じているのは今回の出動において「出来るだけ」市民に不安を与えないようにと通達されていることだろうか 。隠密行動をするわけでもないのにこんな井出達で表に出て不安を与えないわけがないのだ。  だから、彼らの頭の中には既に目的のための戦闘に心を向けていた。ここは日本で戦場に思えにかかることはない、更に相手取るのは人間ですらない強靭な肉体を持った異形の怪人。  彼等に人と同等の知性があるということも知っている。これは人里に降りてきた熊を駆除するのではなく、テロリストから命を奪って制圧するのと同義だ。  人の命を奪うのと同じ――目を背けたくなる事実だが肝に銘じておかなければならない。命の重さと銃の引き金の重さは同じではないが比例するものだ、忘れれば紙よりも軽いモノへと成り果てるだろう。  消えない傷を刻むつもりでこの場に居る者たちはその事実を心に刻み、防人たちは足取りを乱すことなく準備を続けるのだった。                   §§§
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