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『ギッ……ィ』
声にもならない一瞬の断末魔と共に異形は崩れ落ち、消滅した。異形が消え去ったことでウエイブは足を閉じ拳をおさめた。
『……ッ』
仮面の奥から疲れを帯びた息が漏れる。目の前には怪物の群れはもうおらず、気配を探りながら周りを眺めつつ歩いていると足に何かが当たったのに気付いた。視線を下してみるとそこには鞄があって拾い上げた。
見覚えのあるデザインをした学生鞄、位置的にさっきの少女の持ち物だろうと悟る。そこに、けたたましいサイレンと点滅する赤い光が移り白と黒の車がこの場所に流れ込んでくる。
見覚えのあるパトカー――パトカーは有り触れたものなので心当たりがあるというべきか。ウエイブがこの場所に来る前に『撒いてきた』警官隊達、ここにいたのとは別の異形からほぼ無傷で返してやった格好になるのだがそれで警戒を解いてもらえるほどウエイブに都合よく問屋は降ろされなかったようだ。
それどころかランプを点滅させたまま停車したパトカーの後から機動隊員を乗せた警備車両も確認できた。
「動くな!!」
いくつもの銃口がウエイブに向けられる。だが、ウエイブは気にも留めずに刃を収めた自身の武器に何かを挿入してかざしてトリガーを引いた。すると、粒子状のモノが収束と共に可視化されつつそのツールに吸い込まれていく。
「動くなと言っている――!!」
吸入の終了と同時に一発の銃弾が放たれた。だが、ウエイブは再び刃を露にして振るい撃ちだされた弾丸を弾き飛ばした。
「怯むな……撃て!!」
銃弾を弾いたことに一瞬、戸惑ったようだが怒号交じりの指示を受けて警官達は次々と銃口が下ろして引き金を引いた。
ウエイブに向けられた銃口が一斉に火を噴き弾丸を吐きだす――だが、収束する弾道に乗って飛んでいく弾丸は造作もなく弾き飛ばされゆく。一方で警官達は動揺しながらも照準を外すことなく発砲を続ける。
数を撃ち込んで一発でも直撃させるためと、もう一つの狙いがあった。ウエイブが弾の対処へ集中しているその間に側面のビルから銃口をウエイブに向けて構える者がいた――
『――ッ!!』
警官隊達の銃撃が途切れるのを合図に別の銃声が鳴った。それは特殊強襲部隊のスナイパーによる狙撃、頭部へ照準を定めているのが本来は鎮圧を主とする彼らがどれほどまでに緊急性に駆られていることを物語っていると言えるだろう。
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