孤絆‐アローンズ‐

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 海翔はあの夜のことをふと思い出していた。そして思ったのはあの夜が彼女の穏やかな笑みを見た初めての事だったと。  その時まで、彼女と顔を合わせたのは埒外な時の中だけで友達になったのもは行き当たりばったり、落ち着ける余裕なんてものはなかった。  そして、今でも距離のつかみ方は分かっていない。人生で初めての友人――海翔は自分の性格はよく分かっている、どうでもいいものに対して自分はとことん無関心であると。  彼女に対して無関心ではないという自覚はあるが理由は考えないようにしている。理由を考えれば無粋な水を刺すことになるのは目に見えている。  思考に蓋をすると自然とあの夜のことに思考が流れ込んでいく。  身内以外の他人の事を考えることなんて珍しい事だなと思いながらも流れ込んでくるクリスマスパーティーの記憶に思考を委ねた。  あのパーティーは決して賑やかなものではなかった。  だからこそ物静かな性質である海翔達には居ご心地はよかった。淡い光に包まれたような優しい空間、海翔はその中で潤を膝にのせていた七海の姿が鮮明に頭に残っていた。  七海がかなりぎこちないしぐさで膝に乗せた潤を撫でている――思い出せば光景は胸が温かくなる。これは自分と海花とを重ねている……重ねて―― 「おにいちゃん……?」 「ん?」  潤に揺すられて海翔は我に返った。真っ先に目に映りこんだのはバスの窓の向こう側だった。 「大丈夫……?」 「あぁ……朝方に起きてウォーマを追っかけて街中をずっと駆けずり回ったからね。セミュートで知能は低くて倒すのに苦労はしなかったけど、一体、一体はね……」  規則性のないウォーマの活動――どうせ殺すつもりなので文句を言う気はない。ただ、居眠りする程に疲れを自分でも気づききれないのが少しばかり不甲斐ない気がした。 「今更なんだけど……友達というのは、お出かけ先にまで押しかけるものだろうか」 「う……?」 「ストーカーっていう概念があってね――」  世に報道されるストーカーの定義に自分達が当てはまっているのでは――と不安になってくる。これが非常識で許されるのはそれこそ、潤と同じぐらいの年齢ではないかと不安になってくる。 「いつか友達を作らなかった事を後悔する事になるとは思ってたけど……こんなに早くなるとは思わなかった」                  §§§
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