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「……」
駅は電車は時間帯のせいもあって混雑していてバスでの移動を選んでいた。バスは電車と違ってガランとしていて乗り込んだ二人は隣同士で座ったものの会話はなかった。
≪チュミ、チュミ≫
そして、メカイルカはまるでクッションの感触を楽しむかのように七海の黒いストッキングを履いた腿の上で転がっている。本人は特に気にしていないのだろうか何も言わない。
「あの……」
沈黙に気まずさを感じて海翔は瞼が重いのを堪えながら七海に対して声を掛けてみた。すると、肩側に七海がぶつかっていた
「磯貝さん……磯貝さん?」
瞼は閉じていた。肩を揺り動かすが返事は返ってこない、寝てるだけなのか寝息が聞こえない。悪い可能性を思いついたが確かめる方法を思い浮かばない。
「ん……ッ!ひゃ……ぁ」
「えッ!?」
だが、次の瞬間に七海はくすぐったそうに声をあげ身を捩り始める。そして、上着の胸元がもぞもぞと何かが蠢いているのが見てとれた。失礼と思いながらも七海の上着のボタンを取り外すと見知った制服がある。
そして、胸のふくらみの上に蠢くのを見てこのまま服を外すかを躊躇した瞬間にシャツの胸元の間からイルカメカが顔を出した。
≪チュミミ―!!≫
「ほう、心臓は問題なく動いている、胸が上下しているから眠っているだけと。ほう、それはご苦労なことだなぁ!!」
≪チュッ!?≫
素早く七海からイルカメカを引き抜いた。そして、シャツの間から出てきたために外れたボタンを掛けなおして上着のボタンも掛けなおした。それから、AI面にポンコツを抱えたイルカの制裁を始めた。
「キミさぁ……要らないことをしてあらぬ誤解を受けたらどうするつもりだぁ!?」
とりあえずツインアイアンクローの仕置きをしてから、ジェラルミンケースの中に収納して蓋の留め具を掛ける、残り二体いた筈だと気にはなったが後回しにするしかなかった。
ペット(?)の粗相は飼い主(?)である自分の責任として後で白状するのを決める。そして、冷静になった瞬間に疲労や眠気が思い出し屋様に押し寄せてくる。
戦いの疲労もあるだろうが寄り添う温もりが海翔を緩やかに眠りへと誘う。彼女の姿勢を正してやることも考える事が出来ずに深い意識の底にまで引きずり込まれるのだった。
その後、バスの車庫にて先に目を覚ました海翔が気まずい思いをしたのは言うまでもない。
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